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相続関係説明図の作成はAIに任せられるか|司法書士事務所の実務ライン
士業読了 約42026年8月21日

相続関係説明図の作成はAIに任せられるか|司法書士事務所の実務ライン

結論:下書きの整理までは任せられるが、相続人の確定はできない

相続関係説明図の作成は、戸籍謄本・除籍謄本から読み取った情報を整理してドラフトの図式にする作業までであればAIに任せられます。ただし、代襲相続や数次相続、養子縁組、非嫡出子の認知など、法的な判断が絡む続柄の確定は資格者が戸籍原本を確認して行う必要があります。AIが担うのは「整理と下書き」まで、「誰が相続人か」の判断は司法書士自身の役割です。

なぜこの線引きが答えになるのか

相続関係説明図は、法務局に提出する公文書に準じる性質を持ち、記載内容の誤りは相続登記の補正や再提出につながります。特に代襲相続(相続人が被相続人より先に死亡している場合に子が相続する仕組み)や数次相続(遺産分割前に相続人がさらに死亡するケース)は、戸籍の記載を丁寧に追わないと見落としが生じやすい分野です。

こうした判断は、戸籍上の記載事項を条文や先例に照らして確定する作業であり、生成AIが持つ「文章のパターンから最もらしい答えを出す」という性質とは相性がよくありません。AIは戸籍謄本の記載を読み取って家族関係を図にする下書き作業は得意ですが、その図が法的に正しいかどうかの保証はできません。ここを混同すると、誤った相続関係説明図をそのまま提出してしまうリスクが生まれます。だからこそ「整理はAI、確定は資格者」という線引きが実務上の答えになります。

具体的にどう進めるか

実際の業務フローに落とし込むと、次のような役割分担になります。

工程 担当 内容
戸籍謄本の文字起こし・要約 AI OCRやチャットAIで氏名・生年月日・続柄を抽出し、一覧化する
家族関係図の下書き作成 AI 抽出した情報をもとに図式のたたき台を作る
記載漏れ・矛盾のチェック AI+人 抜けている戸籍がないか、続柄の表記に不整合がないかを機械的に洗い出す
代襲相続・数次相続の判定 司法書士 戸籍原本を確認し、相続人の範囲を最終確定する
相続関係説明図の確定・署名 司法書士 完成した図の内容に責任を持ち、登記申請書に添付する

進める際のポイントは次の3つです。

  1. 戸籍謄本はテキスト化してからAIに渡す:手書きや旧字体が多い戸籍は、OCRの精度がそのまま作業品質に直結します。読み取り結果は必ず原本と突き合わせてください。
  2. AIには「整理」を指示し、「判断」は求めない:プロンプトの段階で「相続人を教えて」ではなく「記載された続柄を一覧にして」と依頼を絞ることで、AIが判断めいた出力をするリスクを減らせます。
  3. 顧問先・依頼者の戸籍情報は機微情報として扱う:氏名・本籍・家族関係は個人情報の中でも扱いに注意が必要な情報です。学習に利用されないオプトアウト設定や、法人向け(ビジネス)プランの利用を徹底し、無料の個人向けチャットに戸籍情報をそのまま貼り付けることは避けてください。

筆者の自社運用から

筆者自身、開業当初は経費の記帳を確定申告の直前にまとめて処理しており、書類を後回しにする癖がありました。今は会計ソフトに毎月データを取り込むだけで、月々の作業は10分ほどで終わっています(※あくまで筆者の体感です)。相続関係説明図の作成も、これと同じ発想が使えます。日々の情報を都度AIで整理しておけば、期限が迫ってから戸籍の山と向き合う事態を避けやすくなります。ただし記帳と違い、相続関係の確定には法的責任が伴う点は明確に分けて考える必要があります。

やらない方がいいケース

次のような案件では、AIによる整理作業自体を見送るか、最小限にとどめたほうが安全です。

  • 戸籍が旧字体・手書きで判読困難な場合:OCRの誤読がそのまま図に反映されるリスクが高く、かえって確認作業が増えます。
  • 数次相続・代襲相続が複数世代にわたる場合:関係が複雑になるほどAIの整理結果に抜けが生じやすく、最初から資格者が戸籍を通読したほうが確実です。
  • 相続放棄・相続欠格・廃除が絡む場合:これらは戸籍の記載だけでは判断できず、他の資料や申述の有無を確認する必要があるため、AIに整理を任せる前提自体が成り立ちません。
  • 依頼者から戸籍原本の共有を得られていない段階:不完全な情報でAIに整理させると、誤った家族関係図が独り歩きする恐れがあります。

最初の一歩

明日からできることとして、直近で扱った相続案件の戸籍謄本を1件選び、氏名・生年月日・続柄だけをAIに一覧化してもらう作業を試してみてください。その一覧を原本と突き合わせる時間を計測すれば、どこまでAIに整理を任せられるか、自分の事務所の感覚をつかむ材料になります。戸籍情報を扱う際は、必ず法人向けプランかオプトアウト設定を確認したうえで進めてください。


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